2018年08月10日

『哭声/コクソン』人は試される

映画『哭声/コクソン』に限らずAmazonのレビューを見ていると、
「意味がわからないからつまらなかった」
「なんだかわからないから駄作」
と、理解できないから観るだけ時間の無駄という意見が散見されます。

本当に駄作としか言いようがない映画がないとは言えないし、きちんとテーマがあったとしても観客に理解できるように描けないのは、製作者側の力不足という場合も当然あるでしょう。
だけど観る側の知識を問われることも結構あって、この『哭声/コクソン』はまさにそんな映画です。



哭声/コクソン
監督 ナ・ホンジン
2017年/韓国
75点


一見サスペンスのようでオカルトのようでゾンビホラーのようで訳がわからないけど、はっきりしたテーマがある。
それは冒頭で提示されるので頭のどこかに置きつつ観てみたけど、なんせそのテーマに関して大した知識がないので、
現れたアイテムや意味深なセリフが一体何の暗示なのか検討がつかず、
結局何だったの?とよくわからないまま終わってしまったのは事実です。

あとでネタばれした解説レビューを読んでみると、なるほど〜となんとなく腑に落ちました。
それでも書いている人によって解釈は違い、色んな人のサイトを読み比べるのもまた面白い。

何も考えず娯楽として楽しむ映画もあるし、
知識や理解力や想像力を駆使して味わう映画もあるし、
人生経験を重ねたからこそ心に響く映画もある。
簡単に「わからないから観るだけ無駄」とは言いたくない。

國村 隼さんがキーパーソンを演じていますが、演技が凄いのもさることながら、
韓国人の中で一人日本人がいる意味、描かれ方、も様々な解釈ができます。

色んな意味で、試される映画でした。



スポンサーリンク

posted by マリ at 11:24 | Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月01日

「未来のミライ」と「新しい過去」

2010年に六本木で開催された"これも自分と認めざるをえない" 展で、「新しい過去」という作品がありました。

はじめに自分の名前と好きな食べ物を入力すると、
目の前のカセットテープから子供のつたない声で、
その食べ物にまつわるエピソードが流れてくるというもの。
私はカレーと入力しました。
少女(私)はカレーを好きになった理由を話し出しました。

お母さんが出かけてとても寂しかった時、お父さんがカレーを作ってくれました。
それから私はカレーが好きになりました。

それを聞いて、「そうだった。だから私カレーが好きだったんだ」と胸がいっぱいで泣きそうでした。
いや、そんな過去はなかったはずで、人間の記憶のあやふやさがこの作品のテーマ。
子供の声とカセットテープという懐かしいアイテムに騙されました。
脳の欠陥なのか想像力の力なのかわからないけど、
体験した事も体験しなかった事も、自分の物語として涙できるのはあながち悪いことじゃない気がします。

「未来のミライ」を見て、そのことを思い出しました。

この映画で見せられているのは私や私の家族の人生ではないけど、私も親だし、4歳児だったし、妹がいるお姉ちゃんだし、父と母の子供だし、祖父と祖母の孫。
彼らがたどる物語に自分を重ね合わせて、ちょこちょこ胸がいっぱいになりました。

とはいえ脈略の無さや謎が解明されないモヤモヤ、ちょっと強引な持っていき方、が気になるのは否めません。

でもそれより、
「新しい過去」を見せられたような、過去をいとおしみ、今を大切にしたい気持ちになったから、いい映画だったと認めざるを得ません。

IMAG1228.jpg

未来のミライ
監督 細田守
2018年/日本
個人的評価 80点





スポンサーリンク

posted by マリ at 09:18 | Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月24日

「神様メール」シュールで優しいおとぎ話

神様メールがなかなか面白かったので紹介します。

神様の娘エアが勝手にその人の余命をメール送信してしまったところから始まる物語。
余命を知ったことによって、いつの間にか失ってしまったもの、またはもともと欠如していたものを取り戻す地上の人々と、神様に嫌気がさしていたエアが地上の彼らに出会い新新訳聖書を作る旅のお話です。

神様メール
原題 LE TOUT NOUVEAU TESTAMENT(新新約聖書)
監督 ジャコ・ヴァン・ドルマル
2015年/ベルギー、フランス、ルクセンブルク
個人的評価 82点

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B01M8G8XZN/ref=as_li_ss_tl?ie=UTF8&linkCode=ll1&tag=xxnariuxx-22&linkId=5464385fbe3b8d75f4d9ddeaafd8b3b7

びっくりしたのは神様の描かれ方。
横暴で自分本意ですごく嫌なやつ。こんな神様にしてしまってクレームとかなかったのかな?
例えば、スーパーのレジでは必ず隣のほうが早く進むとか、お風呂につかった途端電話が鳴るとかの普遍的な不快な法則をたんまり作って楽しんでいて、本当に嫌なやつなんです。戦争を始めさせたのも神様。
どこか皮肉めいて、笑ったあと考えさせられるシーンか多々ありました。

シュールでブラックユーモアが溢れているけど、優しい気持ちになれるおとぎ話でした。

印象に残った言葉があります。
不注意の事故で左腕を失ってしまった女性にあるホームレスがかけた言葉。

人生はスケート場。
大勢が滑って転ぶ。

彼女はこの言葉では失ったものの呪縛から抜けきれなかったんだけど、きっと新新訳聖書には載るでしょう。
どんな聖書が作られたのか読んでみたいです。


スポンサーリンク

posted by マリ at 09:46 | Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする